衛生委員会の設置義務とは
50人以上の会社では、「社員の健康と安全を守るために」、
法律により衛生委員会の設置と、毎月1回以上の開催が義務付けられています。
また「議事録」を作成の上、3年間保管義務があります。
そして、審議した内容については、遅滞なく社内に周知することととなっています。
しかしながら、(安全)衛生委員会の存在を知っている人は少なく、実際に機能している会社は、上場企業の中でも一握りの会社だけではないでしょうか。残念なことです。建設会社や有機溶媒を扱うような「危険な職場」であれば、話をするテーマは、色々と考えられるかと思いますが、
危険が少ない一般事務系の職場の場合、いったい何を話せばいいのか?という声をよく聞きます。
衛生委員会の付議事項
法律で定められているテーマについては、
下記の労働安全衛生規則 第二十二条(衛生委員会の付議事項)をご確認下さい。
一般事務系の企業の場合のメインテーマは、下記の3つです。
1)長時間労働による健康被害(メンタルを含む)の防止対策
2)精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立
3)定期健康診断の事後措置などの対策の樹立
近年増加している社員の「メンタル疾患」は、日本の大きな問題のひとつですが、
衛生委員会を法律に従って開催し、法律に定められている付議事項をきちんと検討し、対策を施していけば、現在、数百万人という精神疾患者の増加にはならなかったのではと思っています。
衛生委員会の委員について
衛生委員会で、付議しなければならない事項(法定)を実行するために、
委員会のメンバーは、
1)人事などでの安全衛生に関する業務の経験者
2)労使同数原則
(労働者が不利にならぬよう人事など会社側のメンバーと労働者側のメンバーを同数にすることが必要です。産業医と衛生管理者は会社側としてカウントします。)
3)専門家の参加
(産業医や衛生管理者など専門家を会社側として参加させる)
ということも法律で定められています。
毎月、衛生委員会を開催している会社は、
社員がメンタル疾患に陥るリスクが少なく、
人を大切にする会社
だと思いますが、
あなたの会社では、毎月の委員会の議事録を閲覧できるようになっていますか?
罰則
法律では
・衛生委員会の未設置 50万円の罰金
・書類保存実施違反 50万円の罰金
という軽めの罰則しかないため、労働基準監督署に指摘されたら開始しようと
考えている会社が多いようです。
アドバイスが必要な会社には、
議事録などのモデル様式集を差し上げますので、
下記のページから、弊社あてにお申込み下さい。
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参考:衛生委員会の設置(厚労省)
参考:労働安全衛生規則 第二十二条(衛生委員会の付議事項)
1. 衛生に関する規程の作成に関すること。
2. 法第二十八条の二第一項 の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること。
3. 安全衛生に関する計画(衛生に係る部分に限る。)の作成、実施、評価及び改善に関すること。
4. 衛生教育の実施計画の作成に関すること。
5. 法第五十七条の三第一項 及び第五十七条の四第一項 の規定により行われる有害性の調査並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
6. 法第六十五条第一項 又は第五項 の規定により行われる作業環境測定の結果及びその結果の評価に基づく対策の樹立に関すること。
7. 定期に行われる健康診断、法第六十六条第四項 の規定による指示を受けて行われる臨時の健康診断、法第六十六条の二 の自ら受けた健康診断及び法に基づく他の省令の規定に基づいて行われる医師の診断、診察又は処置の結果並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
8. 労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。
9. 長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
10. 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。
11. 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は労働衛生専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の健康障害の防止に関すること。
※ 先日、衛生委員会を設置していれば、社員の胆管ガンが防げたのではというニュースが掲載されていました。
————————毎日新聞より転載————————-
<胆管がん>多発の印刷会社 予防の衛生委員会設置せず
毎日新聞 6月22日(金)15時0分配信
大阪市内の印刷会社で従業員らに胆管がんが多発している問題で、労働者の意見を反映して職業性疾病を予防する「衛生委員会」などを同社が設置していないことが22日分かった。労働安全衛生法で設置が義務付けられており、厚生労働省は違法として先月30日に是正勧告した。同社では10年以上前から複数の従業員が、社内で使われていた有機溶剤が体調悪化の原因と疑い、換気の改善も訴えており、衛生委員会が設置されていれば、発症を早期に把握できていた可能性がある。
労働安全衛生法によると、業種を問わず、労働者が50人以上の事業所は、健康に異常のある人の発見や措置、病気による死亡を調べて記録などをする「衛生管理者」を置く義務がある。さらに、労使一緒に健康障害を防止するため、「衛生委員会」を設置し、月1回開催して職場環境の維持・向上に努めなければならない。
問題の印刷会社は従業員が50人以上おり、衛生管理者や衛生委員会を設置しなければならない。厚労省によると、同社は衛生管理者も設置していなかった。同社の勤務経験者によると、90年代、体調を崩した従業員が「有機溶剤が原因ではないか」と会社側に訴えたが、否定され、叱責を受けた。職場は有機溶剤特有のにおいが漂い、吐き気などを訴える従業員がいた。別の関係者によると、別の従業員が上司らに換気の改善を2回求めたが、反映されなかった。「職場環境の改善が見込めない」として退職する人もいたという。厚労省もこうした証言を把握している模様だ。同社では10人が胆管がんを発症し、うち2人は在職中に死亡した。問題は今年3月末、遺族らが労災申請したことで発覚した。大阪労働局は一般論と断った上で「衛生委員会があれば、在職死亡は当然、報告され、議題になる」と説明している。
印刷会社の代理人の弁護士は、換気改善の訴えがあったことについて「事実か確認できていない」と話した。【大島秀利】