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疲労蓄積度チェックシートの活用例

月100(80)時間以上の残業をした社員に対し、厚生労働省では、事業主は、社員の疲労蓄積具合の把握に努め、また、疲労蓄積が認められる社員の「医師の面談」を義務化した「改正労働安全衛生法」から約2年半が経過しました。

最近、どこの会社に訪問しても、約60%程度の企業では、厚生労働省が推奨している「疲労蓄積度チェックシート」↓ダウンロード  を活用するようになっています。(40%くらいの企業はまだその存在を知っていないのですが。。。)

100時間以上の残業をされている社員の約1割は、軽度な「うつ症状」がみられます。ただし、9割の社員は、元気であり、「こんな面倒なことはしたくない。面談を早く終わらせてくれ」と産業医にグチをこぼすそうです。

疲労蓄積度チェックの活用事例

今回は、このシートの活用の仕方がいい結果につながっている企業の話です。

①大手電機メーカー

月100時間超の基準では、「うつ病」の早期発見につながらないと判断し、月45時間以上の残業をした社員全員を対象に、残業代の申請時(マークシートで報告)に、疲労蓄積度チェックシートを作成させ、添付することを2年前から義務化しました。この結果、月45時間以上の残業をする社員が激減し、(産業医面談がイヤだから)平均的に夜10時まで会社に残っていた社風が、夜7時にはほとんどの社員が帰宅するという社風に変わったとのことです。

結果として、うつ病などで、休職を申し出る社員が、ほぼ居なくなり、休職者数が激減したとのことでした。

この効果が出るまでは、人事部には、営業担当役員などからサービス残業を助長する結果になるなど、チェックシートの提出について、反対する声が大きかったのですが、結果は、付き合い残業などがなくなり、社員の健康意識が高まり、残業代の請求が減少!し、会社としてはいいことづくめだということです。

後日、この企業の下請けをしているIT企業の社長さんから、最近、仕事が増えたものの、単価が下がり、こちらの企業では、逆に、残業が大幅に増加し、安月給で死にそうなくらい働かないとやっていけないと、グチをこぼしていたことが、印象に残っています。

早く帰宅が出来て、高収入な勝ち組企業と、遅くまで働いても、低賃金な負け組み企業との格差がどんどん広がってきていると感じています。

早く帰宅できるために、何をすればいいか、経営陣は早く手を打たないと、長期的には、負け組み企業に転落してしまう。。。そんなことを日々思っています。

②産業部品メーカー

この会社では、離職率が高いことが、人事部の最大の悩みであり、少しでも社員のストレスが緩和できればということから、チェックシートの活用を始めました。
年に2回全社員を対象に記入をさせており、産業医面談の直前に再度記入させるという方法をとっています。

人事部が注目しているのは、点数の変化率です。
(0~1点:疲労の蓄積なし、・・・6~7点:疲労の蓄積が非常に高い)

約半数の社員は、0点~1点で疲労の蓄積がないと人事部に報告していますが、突然、6~7点にその社員が、点数をつけてくると、大抵、2~3ヶ月以内に退職をしていることに気が付いたそうです。

今では、点数の変化(悪化)があった場合、その上司に、人事部から連絡をとるようになり、上司の方が、社員の意見を聞くことで、離職率がやや低下するようになった。とはなされていました。

ストレスを感じている人の多くが、会社に対して、比較的強い「忠誠心」や「責任感」を持って働いており、まじめな社員ほど、普段は、「0点」をつけてくるのだそうですが、そのような社員が、「7点」をつけて報告したときには、転職先が決まったか、探そうとしているタイミングであることがわかり、点数の変化率(悪化)を見て行くと、社員の離職が防げるとのことです。

国内の多くの会社が、「疲労蓄積度チェックシート」を活用していますが、その結果をまとめた書籍などが、まだ発売されていないため、
定期的に、このサイトで報告していこうと思います。

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