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安全(健康)配慮義務違反とは

安全配慮義務から健康配慮義務へ

昭和時代の「安全配慮義務」は、工事現場などでの「事故や怪我」を防止することが中心であった。しかし、昨今では「過重労働」などの会社での「働かせ方」に原因がある過労自殺や脳・心臓系の疾病(過労死)、うつ病などの精神疾患などの「病気」や「自殺」について労災認定がなされるケースが激増している。
労働安全衛生法は、職業上の病気を予防するための法律として大きく変わり、最近の裁判などでは、「安全配慮義務」を「健康配慮義務」と呼び変えたり、引用されることが一般的になっている。

安全・健康配慮義務違反となるポイント

安全・健康配慮義務違反となるポイントは、下記の2点です。

①社員が心身の健康を害することを会社が予測できた可能性(予見可能性といいます)があり、
②それを会社として回避する手段があったにもかかわらず(結果回避可能性といいます)、
手段を講じなかった場合

に、安全・健康配慮義務違反となります。
「過労やストレス・パワハラが原因で「うつ病」となり、自殺してしまった」というケースでは、
①実態の残業時間や社員の働き方を直属上司や人事部が把握していれば、予測できないことは少なく
②「就業制限–休職や残業禁止措置など」や「配置転換」など人事的な措置を講じていれば、自殺には至らなかった可能性がある場合に、労災認定されるのだ。

人事部長や人事担当役員個人が賠償金を払う時代に

遺族による損害賠償請求は、会社は当然ながら、最近では、人事ライン(個人)に対して請求されるケースが急増中である。例えば、産業医による月100時間超の長時間労働者面接を実施せずに、その記録(5年間保存義務あり)の保管もしていなかったなどの

法令違反があった場合は、

責任者個人(通常は人事担当ラインと直属上司・所属長)を、労働基準監督署職員による司法警察権により、司法処分(懲役・罰金など)すると公示されています。

過労自殺の裁判で、会社側は「社員の自殺について、予見することができなかった」ことを主張することが多いのですが、1ヶ月間で80~100時間超の残業をさせていれば、当然に予見できるものと扱われるようになってきている。

労災リスクを下げる最善策

月80時間超(21時頃まで)の残業を無くすことが、労災リスクを低減する上で最も重要であり、社員の勤務態度(遅刻・欠勤・上司を避けるなど)の変化に気づける上司の育成が労災リスクを下げるうえでの最善策だろう。

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