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社員自殺賠償命令(平成23年3月)

質、量とも過重な労働状態だったのは明らか。
だが、会社は何ら対策を講じなかった

————————————————–(2011年3月1日 読売新聞より抜粋)——

2007年に自動車メーカーの社員だった男性(当時25歳)がうつ病になり、自殺したのは長時間労働などが原因として、同社の責任が問われた訴訟で、地裁姫路支部が原告の主張をほぼ全面的に認めた判決が言い渡された28日、中村隆次裁判長は、男性を自殺へと追い込んだ職場環境の問題を次々と指摘した。

男性は当時、入社3年目ながら、ベテラン社員が担当していた業務に配置換えになり、時間外労働が増えた

中村裁判長は取引先とのトラブルを上司に相談した際、「何が言いたいのか分からん」などと叱責(しっせき)されたことについて、精神的負担は相当なものだったと指摘した。

自殺直前の1、2か月間、会社や自宅での残業時間が労災死認定基準の月80時間を超えていた
と推認されるとし、

「孤軍奮闘し、問題を抱え込まざるを得ない状況でうつ病を発症。危険な状態だったのは、男性が追いつめられていたとの同僚証言などから明らかで、自殺は予見可能」と同社の安全配慮義務違反を認めた。

また、男性の自殺後、上司が笑いながら「この忙しいのに」などと発言し、葬儀で冗談を言うなど、原告が二重の精神的苦痛を受けたことも認定した。判決後、男性の父親(63)らは姫路市北条の県弁護士会姫路支部会館で記者会見。菊井豊弁護士は「最近は労働状況から精神病を発症する労働者が多く、判決が一定の警鐘になった」と意義を強調したが、父親は「社会人としてこれからという時に息子は悩み苦しみ、死に追いやられた。裁判に勝っても、うれしいという気持ちはない」と述べ、
「今も怒りの気持ちでいっぱいだ」
と表情は晴れなかった。

自殺後の会社側の対応について、
「原因を調査せず、自己保身を優先させた責任は重い」
と非難。

これまでの裁判では地裁姫路支部から和解案を提示されたが、「法廷で会社側の責任を認めてもらい、社会に現状を訴えたい」と判決を迎えた。

父親は「二度と不幸な社員や家族を作らないことを肝に銘じて、社員が安心して働ける職場にしてほしい」と訴えた。


 

<コメント>

本事件は、主に、下記の事由により、「労災」として認定されたものである。

1)若い社員に、ベテラン社員の仕事を任せたという「配置転換」
2)月80時間を超える残業
3)悪質な上司による精神的な苦痛
4)周囲が「自殺を予見」できた可能性があったこと

どこの企業でも起こりえる可能性のある事件であると思われますが、

この対策としては、

①適正な人員配置と適材適所となっているか、人事異動の都度、定期的に人事部門が調査を行うこと。
②ストレスを抱えている社員が、相談できる「外部機関等の窓口」を設置すること。
③管理者用の「相談窓口」を設置すること。
④部門毎ならびに部・課単位での「社員全員を対象としたストレス調査」を行い(厚生労働省推奨の調査書が有効)、その結果を数値化すること。
⑤部下の変調に気づけるための管理職対象の各種研修の実施
⑥人事部にて職場の環境を改善するための専門職を設置し、具現化できる体制を整えること。
などがあげられます。

※ 部課単位でのストレス状況が掴めれば、適材適所と適正な人員配置の精度が向上します。

ストレスを組織単位で数値化することで、例えば、「ストレッサー(パワハラ)・ランキング」1位~3位となった管理職は、降格・厳重注意とするなど、悪質な上司を排除し、職場環境を改善することや、仕事量の過多が問題であれば、人事部門に要請し、人員補充をしたり、と

すべて、適切な「人事的措置」を、適切なタイミングで行っていれば。。。自殺は防げる!

だから労災(人災)となるのです。

職場環境の改善ができるかどうかは、人事部門としての大きな課題のひとつです。現場に任せていても、改善はできないと思います。

「仕事が適していない。難しすぎる」などと訴えてきた社員がいれば、仕事の量や質を上司が調整したり、周りが助けることは組織として当然のことだと考えますが、
最近の会社では、個人主義の傾向が強く、「私の仕事はここまで」とビジネスライクに徹している社員が増えてしまったことから、他人の仕事をカバーできる人材が減っていることなども問題かと思います。他人を助けられる人材を育成することも、

適切なタイミングで、適切な「人事的措置」を実施したかどうかで決まります。

尚、上記の①②③④⑤は、弊社のような専門会社にアウトソーシングすることが、質の面でも、予算的にも効果的だと思います。
社内で対応できない場合は、弊社のような外部の専門機関にご相談下さい。

相談窓口の設置については、人事権をもたない社外の「保健師」などの医療資格者を、月に数時間、曜日を決めて、活用することなどの方策を一緒に考えてみたいと思います。

企業の事情に合わせた設計・見積もりを致します。

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