ホンダのCM看板をみて、
自分が死ぬほど苦しかった新入社員時代のことをふと思い出しました。
今、47歳になって、当時のダメな自分にアドバイスしたいと思うのは、
負けたくないなら、その成し遂げたい仕事が、
最高に楽しい仕事だとまず思うこと。
そして、楽しみながら取り組むことが、
負けないための唯ひとつの秘訣
ということです。
私が銀行員になった昭和63年は、日本は鉄鋼不況からようやく脱出し、株や不動産のバブルが始まった頃でした。勤めていた銀行は、国際化が大きなテーマのひとつとなり、海外の支店網を拡充するため、社員の1割近くを海外の大学に留学させるなど、国際的な人材の育成に懸命でした。私が最初に配属されたのは、新規事業として新設されたばかりのM&A(企業の買収・提携)の専門部。それまでの銀行では、仲介手数料を取るビジネスは禁止されており、それが解禁されたばかりでしたので、銀行内にノウハウが一切ない。外資系金融機関のスタイルを真似しながらのスタートでした。
先輩達は、皆、社内ではエリートと言われるような人たちばかりでした。先輩や上司の共通する特徴は、これまで業務目標を達成し続けてきたというプライドを持ち、自分にも厳しいが、他人にはもっと厳しい。全員が、それぞれの専門分野で自分が第一人者であると自負しているようであり、そんな個性の強い人たちが、机を並べていました。
普通、新入社員はそんな職場には配属されるはずがないのですが、希望もしていないのに、社会人経験すらない私が何故か放り込まれました。
配属初日から場違いな感じと、ここの仕事は私にはできないと思い、1ヵ月後にはもうダメだ。と思いました。
いつも職場は緊迫感に包まれており、朝早くから、深夜1時、2時まで皆が鬼のように働いていた。
私の働きが悪かった性なのか、結局3年間、後輩は1人も入って来ませんでした。
手を抜くとか、休むという雰囲気は許されず、徹夜で会社に頻繁に泊まり、土日の出勤も皆がしていたので、それがあたりまえのことだと思っていた。(当時は、土曜日は休みではなく、半日勤務だった)
ある先輩から、血尿が出て入院するまでは、死ぬ気で働けと会議室で殴る蹴るの暴行も受けました。
このときは、さすがに会社を辞めようと思ったが、当時は、まだ転職ができるような環境ではなく、求人情報誌は学生アルバイトの仕事しかなかったので、会社を辞めると、大抵は、大きな失敗でもしたかに言われるような時代だった。
この時の3年間は、仕事が辛くて、上司に怒られる度、自分が情けなくなって何度も泣きました。
仕事中にも、泣いたし、理不尽なことで、先輩から怒られていたことを見た上司が、私を慰めようと近所の寿司屋に何度も連れていってもらいましたが、その度に、最後は、泣いていた。
早く先輩のように仕事ができるようにならなければ。。。負けるもんかと、気持ちだけはいつも頭の中にあった。
何を頑張ればいいのかもわからなかったが、要求されたことを、処理するだけで精一杯で、毎日が、巨大な壁に囲まれているようで、空を見上げる余裕すらなかった。
今思えば、最近流行の新型うつ病だったと思います。当時は、うつ病という病名は、言葉にしてはいけないくらい治癒することが難しく、遺伝的原因による病気のひとつだと考えられていたため、逆に、そんなはずはない。精神病院に行くという考えはまったくありませんでした。
ただ、血尿は、残念ながら出なかったため、自動車に軽く轢かれて、骨折くらいの軽症で入院できないかと毎日、真剣に願ったりしていたのですから。。。病気です。
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入社4年目になると、辞令で、池袋支店に配属になりました。
都落ちした気分にもなりましたが、ようやく普通の銀行員らしい業務をすることができたことがうれしかった。
しかし、タイプの異なる厳しい上司に相変わらず、よく怒られた。
入社5年目になると、自分ひとりでようやく仕事が出来るように(遅すぎます)なりました。営業成績もどんどん上がり、課の中の稼ぎ頭として周囲から認められるようになったのです。6年目に頭取賞を頂いたあたりから、上司に怒られることがめっきり少なくなり、ようやく銀行の仕事のおもしろさを感じられるようになったのです。
仕事がおもしろいと感じるようになると、それまで辛かった残業も、一種の趣味のよう(生きがいと言ってもいいくらい)になり、営業目標を達成することが、戦略的なゲームの攻略をしているような楽しさに変化してきました。
仕事は、「やらされている」間は、ただの労働ですが、同じ仕事でも、自分で「やりたい・楽しい」と気持ちが変わった瞬間から、負けなくなった自分に気づき、成績や効率をあげるための工夫を自らしてみたくなったり、周りの人達に感謝できたりするのです。
負けたくないなら、その成し遂げたい仕事が、
最高に楽しい仕事だとまず思うこと。
そして、楽しみながら取り組むことが、負けないための唯ひとつの秘訣。「負けるもんか』