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事業と稼業の大きな違い

ドクタートラスト社長の高橋です。

仕事をしていると、経営者として判断しなければならないことが、毎日のように起こります。迷いがあるときには、私は、必ず、次のように考えています。

この仕事は、事業か稼業か 

稼業であると判断した場合、私はその仕事をやめるようにしています。

事業と稼業の違いについて、まず、辞書を引いてみます。

事業とは。。。大きく社会に貢献するような仕事。特に,社会的意義のある大きな仕事。

稼業とは。。。生活を維持するための仕事。なりわい。商売。

と書いてあります。

稼業という言葉は、「裏稼業」とか、「浮き草稼業」というように時代劇で使われるようなマイナスの意味が含まれています。事業という言葉は、「事業計画」「営利事業」のように、「お金を儲ける目的で働くこと」というイメージを昔から思っていましたが、辞書には、大きく社会に貢献する仕事と書いてあることに、当時、驚いた記憶があります。実は、この考え方は、最も私が尊敬しているある事業家の方から教えていただいたものです。

今から8年以上前の話になりますが、私は、2004年8月の40歳の誕生日を契機に18年勤めた銀行を辞め、同年9月に、株式会社ドクタートラストを設立しました。設立当初は、複数の病院の経営コンサルタントとして、理事長が最も苦手とする「病院経営」と「財務面(資産や負債)」を改善するアドバイザーとして、渋谷にある自宅の一室に電話回線を1本引くところからスタートさせています。初年度から、自分でいうのも何ですが、順調に顧問先が増え、数ヵ月後には自宅の近くに事務所を借りるまで売上が伸びてきて、銀行員時代の収入を遥かに上回るようになっていました。特段の問題意識もなく、ただただ時間に追われる忙しい日々を送っていたある日のこと、銀行員時代にお世話になった事業家(米国に本社がある世界的にも著名な現在70歳代の企業の創業者です)が、約束も無く、ふらっと突然私の事務所にやってきて、「仕事は順調か?もう1年になるな!」「決算書を見せてみろ」というので、当時抱えていた仕事の内容などを説明しながら、決算書をみてもらったところ、

「高橋さんの仕事は、稼業に過ぎない。」「稼業が悪いとはいわないが、顧問先の病院のオーナー数名を喜ばすだけで、社会全体を幸せにするための事業とは言えない。」「事業とは、社会全体に大きく貢献できる仕事のことをいい、どれだけ沢山の人を幸せにできたかということで会社の価値が決まる。」

「まだ、高橋さんはよく解っていないが、稼ごうという気持ちは、もちろん大切だか、時に、稼業というレベルの働き方は、自分のことしか考えていない、卑しい働き方であるとも言える。」「稼業というものは、一瞬の間、そこそこ稼げることもあるかもしれないが、そんな働き方や動機で始めたものは、永くは続かない。」

「社会を幸せにするために始めた仕事は、それに参加したいという仲間を得ることができる。今の仕事は、専門家としての個人ビジネスであり、高橋さんが病気になったり、死んでしまえばそれで終わってしまう。」「たくさんの人を幸せにする働き方をすれば、幸せになった人が、人が人を呼ぶようになり、押売りのようなことをしなくても、自然と大きな輪ができる。」「お金とは、人が幸せになりたいと思った、その瞬間に、財布から手渡されるものであり、何でもそうだが、幸せになりたい人は、自ら幸福を求め、買いに来てくれるということが、基本だ。買いにきてくれた人に、対価に見合った以上の満足感を与え続けることができれば、自然に良い評判が伝わり広がっていく。」

「稼業とは、その日を暮すために、生活のために、稼ごうとする行為をいい、自分自らが、商品やサービスを売り込む手法となりやすい。」

「サラリーマンの多くが、稼業的な働き方、志に留まっていることが残念だ。会社の上司から指示されたことを、好きでもないのに、「生活のためだから」と
仕方なく、我慢しながら働かされている。」「大きな幸福を与え、社会に貢献するという人に与えられた使命を忘れてはいけない」「社会に「大きく」貢献しているかという視点で常に自分を戒めていかなければいけない。」「稼ぐことを目的にしてはいけない。幸せをつくることが目的だ。」「お金自体に価値などない。ただの紙とただの金属に過ぎない。」「誰かを幸せにした結果、人から人にお金が手渡され、回っていくだけのことだ。」

「手元にお金を残そうなんてせこいことを考えずに、社会のために事業を始めてみなさい。」「そして、事業が成長している間は、「幸せ」を人から人へ回し、伝えてていくことだけを考えるといい。」「その事業が、たくさんの人を幸せにすることができるようになったときに、結果として、この考え方を知らない人達よりも、自分の前を通り過ぎるお金が増えることになる。浪費はいけない。事業の輪が拡がる使い方をしなさい。」

事業の価値は、幸せをどれほど創造できているかですべてが決まるので、目先の損得や儲けの多寡で考えずに、永続して、圧倒的に、支持を得られるファンを創れる取引になるかどうかを考えなさい。永続しないものは、時間の無駄なので、手を出してはいけない。」「価格は、安ければよいという客の声を聞いてはいけない。」「それに応えてしまうことが、稼業であり、幸せを求めていない客を相手にすることは、事業で有り得ない。」「ものの値段は、本来、客が決めるべきであり、客が受け取った幸せの大小で値段が決まる。」「このため、与えることができる幸せの価値を、常に高める努力や工夫をすることこそを、事業の柱としていかなければいけない。」

「人を幸せにすることを、第一に、何よりも優先して考えないと、事業家としては、必ず失敗する。」

 

当時の私は、今も尊敬するこの事業家が言っている意味が、正直よくわからなかった。しかし、仕事が増えて、社員が徐々に増えるにつれて、この時に教えていただいたことが少しずつ理解できるようになっている。事業と稼業の大きな違いを、肝に命じて、守っていかなければならない。

大きく社会に貢献できるよう、今はまだまだ小さな会社であるが、社員一同、全員が団結して、人を幸せにするための技に磨きをかけるよう努力を続けたい。

また、人を幸せにするためには、社員一人ひとりが幸せでなければならず、社員が、「楽しく働ける」ための職場の環境整備を常に、念頭に置かねばならない。

と考えている。

sanho-bnr

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